2011年5月14日土曜日

短歌鑑賞

この間立ち寄った日本の本屋さんの雑誌売り場で4月号のNHK短歌を見つけた。ぱらぱらとページを繰ると偶然に円居短歌のブログでもトピックになった馬場あき子の選の十首が巻頭秀歌に載っていたので鑑賞してみたい。私の住んでいる当地はもう葉桜の頃だが、桜や春を題にした古代から現代までの歌人の歌が取り混ぜて選ばれているのてそれぞれの時代を反映しているようで面白い。

桜花咲きかも散ると見るまでに誰かも此処に見えて散りゆく (作者未詳「万葉集」巻12)
さくらさくらふはりと降りてあんぱんの臍の窪みを湿らせ咲けり (川野里子「王者の道」)
うすずみのゆめの中なるさくら花あるいはうつつよりも匂ふを (斎藤史「ひたくれなゐ」)
花は根に鳥は古巣にかへるなり春のとまりを知る人ぞなき (崇徳院「千載和歌集」)
かぎりなく世界が崩れゆく日にもおたまじやくしは池に涌くなり (前登志夫「大空の千瀨」)
水中に蝌蚪(くわと)くろぐろとうごきゐてわが心知らずみな歓喜せり(前川佐美雄「捜神」)
つばくらや四月の麦に風ふけばあをき皺立つ関東平野 (都築直子「淡緑湖」)
ドアに鍵強くさしこむこの深さ人ならば死に至るふかさか (光森裕樹「鈴を産むひばり」)
暮れてゆく春のみなとはしらねども霞に落つる宇治の柴舟 (寂蓮「新古今和歌集」)
鹿たちも若草の上にねむるゆゑおやすみ阿修羅おやすみ迦楼羅 (永井陽子「てまり唄」)

太平洋を隔てた日本では原発事故の収束が未だにつかずに不安な暗い気持ちでいる。それでも我が家の狭庭に蕗のとうのさみどりが目を楽しませてくれる。「かぎりなく世界が崩れゆく日にも・・・」が私が今一番共感できる歌だ。

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