2023年11月6日月曜日

2023年9月 E メール短歌会 題詠「髪 」



赤:講評 
紫:作歌者の応え 
青:講評を参考に推敲した最終歌


北里かおる

*姪っ子は母となりたり嬰児の髪やわらかくそっと手をやる

(白樺)そっと手をやるのは作者か新しくお母さんとなられた作者の姪っ子さんでしょうか?)

(深沢)母親の新生児に対する優しさが表れている歌だと思います。

 (千代)”姪っ子という言葉で、あの可愛かった、あるいは幼かった姪が母となった、という感慨があるように思います。そっと手をやるのは、母である姪っ子であると、判断しましたが、髪やわらかくというと、作者が手をやったようにもとれますね。どちらなのでしょうか?

最終歌:姪っ子は毋となりたり嬰児の髪に手をやる眼差しやさし


潮風よ商店街に吊るされた風鈴千個つなげ奏でよ


(白樺)日本の夏の風物詩風鈴を題材にした季節感あふれるお歌です。

(深沢)港町の風景を歌われたのでしょうか。涼やかな音色の夏の風物詩が商店街に飾られているのですね。

(千代)三句目吊るされたを、吊るされしとした方が歌としていいように思います。


最終歌:潮風よ商店街に吊るされし風鈴千個つなげ奏でよ


福島の漁師の不安そのままに八月の海悲しみの青


(白樺) 原発からの処理水がすでに海に流され始めています。処理水を海に流すことについては賛否両論ですがこれから先どんな影響を及ぼすことになるか不安です。

(深沢)今回の海洋放出は漁師に不安を募らせますね。社会時事問題をうまく切り取られ多1首だと思います。

(千代)結句が気になります。表現が甘いという感じがします。それは悲しみという言葉にあると思います。処理水放水の日八月二十四日の海の青としたほうが、インパクトがあると思います。


最終歌:福島の漁師の不安そのままに八月二十四日の海の青


宇都木千代


吹き抜ける薄ら冷たき過去の風 ある光景に心凍てるも


(白樺) "ある光景"とはどんな事か興味がわきます。歌としては読み手に想像を任せる事が出来ると思いますが漠然として歯痒さを感じます。

(深沢)過去に壮絶な体験などをなされているのでしょうか。ある光景に具体性があるとよいと思います。

(北里)何かを見て辛い過去の出来事を思い出した時の歌なのでしょう。風とは記憶のことでしょうか。少し具体的な内容を入れると読み手にも言いたいことがより伝わるのでは、と思います。「うすら寒い」とは言いますが「うすら冷たい」はあまり言わないような。あと、結句の「も」は?


最終歌:吹き抜ける薄ら冷たき過去の風 ある光景に心凍てるも


ダイレクトメールに混じる手書きメール 心躍りて急ぎ開けしに


(白樺) 結句の"開けしに""開けたのだが期待に反した"という意味でしょうか。

(北里)DMが本当に多いので、気持ちよく分かります。「手書きの封書」とすると良いのでは。メールは携帯を思ってしますし。「開けしに」は過去形?「に」は?

(深沢)COVIDの後は極端にダイレクトメールが減りましたが、E-mailで殆どの用事が済んでしまう中、手書きの郵便物が届くとは素敵ですね。開封するのを心待ちにしているのがよく分かります。


最終歌:ダイレクトメールに混じる手書きメール 心躍らせ急ぎ開けしに


*消え失せし緑の黒髪 故郷は茶髪金髪かぜに吹かれゐる


(白樺昔の日本の美人の一要素はツヤツヤとしたカラスの濡れ翼とか緑の黒髪と言われていましたが今では多様性が広まり髪の色も様々です。)

(北里)茶髪金髪、一部の人々の傾向としては分かりますが、故郷と限定して結句へ続くと、何か特別な意味があるのではと思います。私の暮らしの中では、自分も髪は茶系に染めてますけど、金髪は見ることいですので。中学校は髪染め禁止ですが、夏休みに反動で金髪にする生徒いましたが。

(深沢)時代の移り変わりを感じさせられる1首です。YouTuberと言われる人は緑やピンク等に色に髪を染め、昔が恋しいと感じます。


最終歌:消え失せし緑の黒髪 故郷は茶髪金髪かぜに吹かれゐる


白樺ようこ


*ハサミ持ちあて鏡をしてカットするわが髪型は毬栗頭


(北里)「持ちあて」?または「あて鏡」?「毬栗頭」懐かしい響きですが、丸刈りの頭、坊主頭とありましたのでちょっとびっくり、でも女性でも丸刈りに近い人いますものね。思い切ってベリーショートにされたのですね。歌にして残す意味ありますね。

(深沢)合わせ鏡ではなくあて鏡なのでしょうか。

(千代)二句目あて鏡をしての助詞の除いてあて鏡してとすれば七音でいいのでは。4句目と結句は毬栗頭と化せしわが髪としてみました。


最終歌:ハサミ持ち合わせ鏡してカットするわが髪型は毬栗頭


朝顔の蔦のからまる生垣の手入れを待ちてる猛暑日の庭


(北里)「待ちてる」?「待っている」の意でしょうか。手入れとは「朝顔の蔦」を「生垣」から取り除くことですか。であれば「手入れを待っている生垣」、で「庭」はなくても良いのでは。猛暑だと外仕事は手がでませんね。熱中症になったら困ります。

(深沢)庭に手入れも滞るほど日本も暑いのですね。花が咲き終わったら今年は蔓でリースを作れるかもしれませんね。身近な切り取りから様子がうかがえます。

(千代)は木の種類の一種ではないかしら?ではないですか?三句目生垣はとして、手入れを待ちて猛暑を耐へゐるとしてみました。そうしないと初句から結句までが最後の名詞に係る連体修飾節になってしまいますので。


最終歌:朝顔の蔓のからまる生垣は手入れを待ちて猛暑を耐ヘゐる


ホームレスも物乞いも見ぬ街の中自転車漕ぎて買い出しをする


(北里)アメリカだと自転車で買い物へいくということはないでしょうから、日本のそういった日常の暮らしぶりが新鮮に映ったのですね。日本にもホームレスはいますが、地方では日常で目にする機会はないですね。 

(深沢)平和な街もまだあるのですね。それとも酷暑で皆、日陰に身を隠しているのでしょうか。

(千代)買い出しという言葉が、私には少し大げさに読めます。戦後の日本の状況を思い出すからかもしれませんが・・・。買い物へ行くでいいように思います。


最終歌:ホームレスも物乞いも見ぬ街の中自転車漕ぎて買ひもの急ぐ


深沢しの


山頭火の生き様偲び口遊む「遠くへ行きたい」旅にでてみたし


(白樺) 結句を「旅に出でたし」としてみました。

(北里)山頭火が全国的に知られるようになったのは昭和40年代、永六輔さんがラジオの「遠くへ行きたい」で紹介したことからとのこと。コロナの規制も緩み旅に出る人が多くなりました。どこか遠くへ行きたい人にあすすめの本の一冊として『山頭火句集』があがっていました。

(千代)生き様様(ざま)が、私にはどうも言葉として好きになれないでいます。人それぞれでしょうが、生き方とか、人生(ひとよ)とか。でも、山頭火の生きた様子は様(ざま)が似合っているのかも。結句は結論づけているように思えます。結句も歌詞から遠い街・海としたらどうかしら。


最終歌:山頭火の生き様偲び口遊む「遠くへ行きたい」旅にでてみたし


YouTubeという「メディア」を通してアピールすMAUIの火事の真の理由を


(白樺) MAUIをマウイ、アピールを問いかける、としてみました。)

(北里)送電線の通電を停止しなかったことが出火原因、というニュースのことですね。本当に痛ましいことでした。この件に関してYouTubeを通して詠み手が何か特別なアピール活動をし、YouTubeを「メディア」の一つであることを強調した歌なのかなと思います。

(千代)YouTuberが、アピールするのですか?この歌の意味と、私には、この歌を詠んだ主旨が、はっきりしません。Youtubeというメディアの便利さを詠いたかったのですか?


最終歌:YouTubeという「メディア」を通してアピールすMAUIの火事の真の理由を


濡れた髪そのまま齧る外気温 夏の一つの写像となりて


(白樺) 齧の漢字にフリガナを付けるとよいと思います。

(北里)送電線の通電を停止しなかったことが出火原因、というニュースのことですね。本当に痛ましいことでした。この件に関してYouTubeを通して詠み手が何か特別なアピール活動をし、YouTubeを「メディア」の一つであることを強調した歌なのかなと思います。

(千代)分かるようで、分からない歌という感じです。髪を洗って、外に出て、その外気温はものすごく暑いのですよね?その状況を"齧る"としたのですね?写像をどういう意味で使っているのですか?

最終歌:濡れた髪そのまま齧る外気温 夏の一つの写像となりて


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