2014年12月5日金曜日

11月の短歌と合評

担当:白樺

今月はどの歌をとりあげようかと迷ったのですが、身辺詠や自然描写の歌が多かった中で多少とも現代社会の事象に触れる歌として中井さんの以下の歌をとりあげました。

*寂びゆける疎林に風のたゆたいて落葉をなでる 老老介護 

上四句まで読むと自然を描写した歌のように思えますが、一字空けて結句の「老々介護」ではたと考え込んでしまいました。はたして最初の四句と結句とのつながりは何か。二度三度と読み返してみるとなんとなく身辺の自然現象を通じて背後にある何か大きな現象を暗示させているようにも思えてきます。高齢化社会になっていく中での老人同士の介護の重荷、お互いの思いやりや優しさなどが落葉が風に吹かれて散り乱れるように疎林の中を過ぎ去ってゆく。
社会詠はとかく理念が先走りして概念的になり上滑りした歌になりがちです。
社会詠をよく詠った太田青丘の「短歌開眼」に「・・・身辺の事実(個)に即して、事実の意味(全)を暗示又は開示する方が効果を発揮する・・・」とあります。なるほど何時も講評などで取り上げる具体性とはこの事実(個)に即するということなのかとうなずけます。
                                       
(萩)老老介護は想像を超える大変さと厳しさがありますので、結句に老老介護を持ってくるには4句目までがのんびりし過ぎていると思いました。“、、、、風は吹き荒れて落葉を飛ばす”というような表現の方が私にはぴったりきます。 
                                                            
(千代)意図するところは、十分に理解できます。4句までが、結句を導き出す舞台装置であること。しかし、「寂びゆける」で、荒涼たる感じをうけますし、落ち葉は秋か冬でしょうし、風も冷たく厳しいのではないかしら?きっと北風でしょうし、その風がたゆたいで落ち葉をなでる、という表現が、アンバランスな感じを受けます。   
                                                                                                                               
 (北里)ご自分の今のことを詠ったのでしょうか。結句の「老老介護」が少し唐突に感じました。 
 
(白樺:老老介護のがやるせなさが前半の描写で浮き彫りにされています。結句の前の一字空けも効果的と思います。)

最終歌;暮れゆける疎林に風の吹きゆきて落葉をなでる 老人介護

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