2023年3月31日金曜日

2023年3月 Eメール短歌会 今月の歌

  


赤:講評
紫:作歌者の応え
青:講評を参考に推敲した最終歌

担当:深沢しの

今月は北里かおるさんの歌を選びました。 

元 歌: 根明け待つカラマツ林一瞬の無音の中に息吹くものあり
最終歌: 根明け待つカラマツ林 一瞬の無音の中に大地の息吹

 毎月、新鮮な言葉に触れることができるのが参加している1つの楽しみなのかもしれません。何冊本を読んでも、日本語には語彙があり過ぎて、毎月が学びの月となりとても新鮮な感じを味わうことが出来、少し得をした気分になることができます。

 雪解けの時期、木の根の周りから雪が解けるのを見ますが、この状況を表した季語があると聞いたことがあります春の季語として使われている「根開け・根明けと言う言葉です。季語の辞典、歳時記を調査するも見つからず、雪国ならではの現象であることから、北方資料の『北の歳時記』『葦牙北方季題選集』に掲載があり。「木の根明く(キ ノ ネ アク)」となっています。改めて「木の根明く」で調べると『語りかける季語ゆるやかな日本』に詳しく掲載があり、同じ意味で「雪根開き」「根開き」「木の根開き」「根明き」などがあるということでした。
 雪の季節が終わり暖かくなってくると、幹の回りに根回り穴または根開けとよばれる雪解けの穴ができます。これはなぜできるのでしょうか。一つは太陽からのエネルギーが雪面では反射率が大きいのに対し幹では吸収されやすいので局所的に温度が上がり雪解けが進むという理由によるものです。 その他の理由として、暖かい雨が幹を伝って幹周りの雪を解かす。幹の陰になって降り積もる雪の量が幹の周りだけもともと少ない。暖かい風がふいたとき幹周りで風の流れができ雪解けを進める。などの理由が考えられます。枯れた木の周りにも生じるので樹木自身が発熱しているという訳ではありません。

合 評

(千代)根明けは、根開けとも書くのですね。この現象は雪国にだけ顕れる現象なのでしょうが、初めて聞いた言葉です。映像をみて詠ったのですか?あるいは、作者は実際に見たことがありますか?どうして根の周りが先に雪が解けるのでしょうかね?根から梢まで温かな樹液が流れて、木が芽吹き始めるのでしょうか?その時根本が温かくなるのかしら?大自然の不思議な営みですね。根明けという言葉も素敵な言葉ですね。結句、息吹くものありものよりも気配ありではどうですか?
(北里)カラマツ林は大きな公園等にあります。根明けは春が近づくと、家の庭木もそうなりますし、立木のあるところならどこでも見られる現象です。木が吸い上げる地下水が空気よりも温かいので、地下水を吸い上げる幹の周りの温度が高くなり、先にそこから雪が溶けるのです。また、溶け始めたところが太陽の光を吸収してさらに温められ、木の放射熱が四囲に及ぶこと、根元の窪みに温かい風の渦ができることで広がっていくそうです。
(白樺)「根明け」は耳新しい言葉です。辞書にはありませんでしたがGoogleで調べましたら写真が載っていました。春が近づく中で生の息吹が聞こえてくるような言葉ですね。上の句は韻律的に五、七の二句で一旦きれてから下の句で五、七、七と続くのでしょうか。その場合でしたら「カラマツ林」の後に一字分開けるのもよいと思います。
(深沢)静けさと表現するのに一瞬の無音と言う言葉の選択は素晴らしいと感じます。


 

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