2020年7月26日日曜日

令和2年7月短歌と合評


担当  深沢

今月は宇津木千代さんの歌を選らばせてもらいました。
コロナ禍のため自粛が長引き、自宅で心の休まりどころと言えばレスキューした小型プードルです。自分にとっては2匹目の雄犬となりますが、優しい犬ですが一歩外に出ると献身的に自分を必死に守ってくれます。男性に虐待されて家族から捨てられた過去があるのに、今では警戒心もとれ私を信頼してくれています。
動物と人間の関係は言葉に表せない部分も多くあり、野生の鹿の親子であればなおさら、子供を危険な場所にさらしてはいけないという母性本能が強くなり警戒心が一層高くなります。
同じ場所で人間に見られていることは感じているはずなのに授乳を中断しない母鹿、見ている人間は鹿の親子に危害を加えることはないということを悟ったのでしょう。作者と目が合っても授乳を継続する母鹿の強さと人間をへの信頼に心が和まされました。

(原歌)立ちしまま授乳をしゐる母鹿の目と裏庭の吾の目が合ひぬ
(北里)警戒心の強い野生の動物が人間の目の前で授乳をするというのは、めったに見られない光景かと思います。鹿は人間に見つかっても直ぐには授乳を止めなかったのでしょうか。それともすぐその場を去ったのでしょうか。目が合ったという一瞬を切り取っていて臨場感がありますね。その後の情報が入るとその場の緊張感がさらに伝わるように思います(千代:歌は一旦作者を離れたら、後は読者のものになる、ということが言われています。その歌はもちろんある程度熟練した歌でしょうが、歌には想像の余地が必要かと思います。31文字ではもちろんすべて言い尽くせませんので、読者も想像を駆使して読まなければならないと思います。想像の余地のない歌は面白みがないのではないでしょうか?・・・と言いつつ、この鹿は毎日家の周りに子供二匹を連れてやってきます。私の書斎の窓の前にある小さな空き地は昼寝の場所になっているらしく、そこにどっかりと親子だ座り込みます。鹿の去った後には、ウサギやらリスやらが来て遊びます。長い間私は見惚れています。この日は、パティオの椅子に座っていた私にしばらく気付かなかったのでしょうね、突然気付いたようですが、動かないまま授乳続けていました)
(白樺)一瞬のほほえましい状況の切り取りでよいと思います。鹿と人間、母親同士で心が通い合ったのかもしれませんね。裏庭に作者が居て鹿も裏庭に居たのでしょうか。
(深沢)吾が は省いても良いと思います。目と目が合った時間とか場所を入れても良いのではないでしょうか。自然に囲まれていて羨ましい限りです。(千代:ここは工夫したところで、“裏庭の吾の目”というところ、吾は省けません。こう表現することで、鹿が人家の近く、あるいは裏庭で授乳している、ということを読者が理解できると思います。)

(最終歌)立ちしまま授乳をしゐる母鹿の目と裏庭の吾の目が合ひぬ


2020年7月12日日曜日

六月の短歌と合評

                                                                                                            
担当:北里かおる

 歌: 不可思議に書かれた斜めの文字の列 祖父の遺品の大学ノート
最終歌: 不可思議な斜めに書かれた文字の列 祖父の遺品の大学ノート

今回は、白樺さんの歌を選びました。掛け軸や古文書、かな文字、崩し文字が読めない時の気持ちと重なりました。不可思議な文字は知らない国の言語かもしれないし、だったらどこの国だろう、などと想像を掻き立てる一首です。種明かしでは日本語とのことですが、深沢さんのコメントにあるように暗号だったりするかもしれないですね。
そう考えると、おじいさまのノートにはいったい何が書かれているのか、読解不明な文字の先にあるその内容にも興味がわきます。何かの重要機密だったりして・・・。
私には祖父の記憶がなく、遺品なども見たことがないです。この歌を読んで、今まで考えたこともなかったのですが、どんな人だったのかと思いました。

(千代)ただ斜めに書かれているだけで、読めるけれど、何で斜めに字を書いたのか分からない、ということですか?あるいは斜めに書かれていて判読できないような字である、といことですか?後者でしたら、「不可解な斜めに書かれた文字の列 祖父の遺品の大学ノート」としてみました。
(北里)おじいさまの遺品としてノートが残っているなんてすてきです。右斜めなのか、左斜めなのか、英語ですか、日本語ですか?何が書かれてあるのか、興味がそそられます。もう少し具体があると不可思議さが伝わるのでは。(白樺)確かに日本語であるとは思うのですがエジプトの象形文字のような不思議な字です。
(深沢)暗号を解読されていたのでしょうか。理由が知りたい1首です。