2012年11月1日木曜日

2012年10月の短歌と合評

担当:萩 

十月の円居短歌会合評」から白樺さんの一首を選びました。このような悲劇をどのように詠めばいいのか考えさせられた一首でした。地名を入れたらどうかという意見もありましたが白樺さんは〝世界各地にある悲惨な現実なので敢えて地名を入れなかった″と書いています。いずれにしても読者に実感が伝わるかということが大きなテーマなのではないかと思います。

(原歌)身売りせしをとめの片目のつぶされて水牛曳きて湿原をゆく

 
(萩) 地名を入れるとリアル感が増すと思います。
 
(千代) 記事と写真をみて詠った歌と思われます。やはりどこか地名が入ると、読者にはもっと現実味が湧くと思います。「・・・をとめの片目つぶされて」と“片目の”の「の」を省けば、定型の5音に納められます。

(北里) 現実のことであれば大層悲惨な状況ですが、何かの物語の一場面なのでしょうか。

(中井) 何の物語なんでしょう。私の知らないお話のようですが、「水牛曳きて湿原をゆく」のは誰なのでしょう。主語が隠されているのか、「をとめ」がそうしているのかどちらでしょう?もし,「をとめ」が牛を曳いているのでしたら、「身売りせしをとめは片目」とした方がいいと思います。 

(もも)これは、TVで観た場面でしょうか。悲しいですね。どこの国の画像なのでしょうか。

(いずみ) 物悲しい情景は浮かんできたのですが 読み取ることができずよく解りませんでした。

(きぬ) こういうおぞましい境遇を生き抜かねばならない子供達がいることを思うと、本当に可哀想でなりません。ショッキングな内容を淡々と詠われていて、また情景がはっきりとしてとても良いとおもいます。

(最終歌) 身売りせしをとめは片目つぶされて水牛曳きて湿原をゆく

(白樺)これは物語りではなく、"Half the Sky" というドキュメンタリー(by Nicholas Kristof & Sheryl WuDunn)を観た時に感じた歌です。 21 世紀の現代においても貧しさや不遇故に売春窟に売り飛ばされていく子供たちがいる現実を現地取材して記録したものです。 この歌の場面はカンボジアの例でしたが、世界中にこのような現実があることに対して ”Turning Oppression into Opportunity for Women Worldwide" というスローガンのもとで救いの手をさしのべようとする運動をおこしています。 地名を入れることを考えましたが、世界の各地にある悲惨な現実なので「湿原をゆく」として表してみました。 



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