2022年8月29日月曜日

2022年8月の合評と短歌

 担当:宇津木千代

元歌:      原爆の無き世を願ふ千羽鶴大空に飛べよサダコの手より            

最終歌:  原爆の無き世を願ふ鶴一羽拾ひて戻さむサダコの掌へと

作者はシアトルのPeace Parkにある”サダコの像”を訪れました。その時の印象を次のように書いています。「その時のPeace Park は手入れが行き届いていないで、雑草が周りに生えていて鶴一羽が草むらに落ちていました。今の不安定な世の中をを象徴しているようでした。」と。この状態こそ歌に詠うべきだと思ったのですが、最終歌はそのようになっていました。元歌は抽象的で、観念の歌になっていますが、作者が実際に見た、感じたその小さな一点を詠うことこそ個性ある歌になるわけです。「原爆の無き世を願う」は、平凡すぎる、個性なき表現なので、初句を工夫し・・・・草叢に落つる鶴一羽拾いて戻さむサダコの掌へと 表現すると、もっとインパクトがあるように思います。

2022年8月6日土曜日

2022年7月の合評と短歌

 担当:深沢 しの

 

元 歌:*新しい傘をさそうかさすまいか迷う幼子「かさがぬれちやう」

最終歌:*新しい傘をさそうかさすまいか迷う幼子「かさがぬれちやう」

 

今月はとても素朴な北里さんの1首を選んでみました。子供の素直な心理が歌われていて、大人からは想像もつかない切り取りが新鮮に感じられました。素朴さの中に常に詩人の心で、この日本の素晴らしい言語文化を楽しんでいるのが短歌なのだとこの歌から思えました。

お題の提案者が今月は自分の順番だったので、その中から選ぼうと初めは考えましたが、題が決まっていることで、その範囲の中で考えることをしなければなりません。何でもそうですが、自由過ぎると逆に不自由というか、やりにくくなることがあります。そんな中、その素朴さに新鮮味を感じました。

2年間に渡り友人の双子(現在4歳児)の心理について週2回研究をしてきていることもあり、自分では結句が魅力的な語彙でした。時には子供心に戻り、この住みにくい世の中を過ごせていければなという思いからこの1首に引き寄せられました。

 

合 評

 

(千代) 可愛い女の子ね!こんな子居そうですね。いいと思います。

(白樺)女の子の話ぶりがそのまま伝わるかわいらしい情景です。

(深沢)ほっこりさせられる1首ですね。真新しい傘なら勿論ぬらしたくはないですね。微妙な子供心理がとても新鮮に感じられます。