2022年4月28日木曜日

2022年 4月短歌と合評

 担当:宇津木千代

元歌 *お医者様パソコン見ずに私診てカルテと私どっちが大事             最終歌*お医者様パソコン見ずに私診てカルテと私どっちが大事  

 今月は題詠が ”ユーモアのある歌”ということで、どの歌も「なるほど、あるある」というような納得の歌、思わず笑ってしまうような歌などあり、どの歌を選ぶか迷いました。最終的に深沢しのさんの歌を選びました。この歌の面白みは、患者などほとんど振り向かないで、何か患者が質問しても、訴えても”うん、うん”などと空返事をしながら、データだか、報告書だかの画面を見つめ続けている姿と、患者である私がイライラしている姿が脳裏に浮かんできます。”よくある、ある”の場面を上手く捉えています。

合評:

 白樺:画面よりもまず人を見るお医者さまは信頼できるのでは?

(北里)私にも同様の経験があり、若い男性医師はちらっとも私を見ず、すごく腹が立ちました。この歌は話し口調にしたのが良いと思います。パソコンに向かっていても診察はしているので、「診る」は、こっちを「見て」の方が分かります。

(千代)切り取りがいいですね。本当にそうですね。よく理解出来る歌です。


2022年4月10日日曜日

2022年 3月 短歌と合評

担当:深沢しの

 今月の短歌は北里さんの歌を選びました。

重低音で鳴り響くボイラーの音は、その場で聞く音よりも離れた所で聞く音の方が反響して大きくなる事がありま機械が動いている時はさまざまな音が出ていますが、正常な動作音と事故につながる可能性のある危険な音も存在します「唸る」という題詠にのっとり1首を詠うがために、夜中で不気味であるその場の状況を表現するのに相応しい語彙の選択に興味がそそられました。

元歌: ボイラーの低く唸るを聞きながら処置室前に父待ちし真夜
最終歌:ボイラーの低く唸るを聞きながら処置室前に父待ちし真夜

 

(深沢)真夜中に耳に入ってくる音には、何とも言えない恐怖感も募ります。どのような気持ちで時間た経つのを待っておられたのか、とても寂しい歌の様子が感じられます。

(白樺)しんとした夜中のボイラーの唸る音に作者の揺れ動く心情が伝わるようです

(千代)“ボイラーの低く唸る音” それも真夜中であれば余計不気味に、不吉な状況が描き出されていますね。この時の状況が、ボイラーという小道具を使って上手く描き出されていると思います。