担当:北里
元 歌:裏窓ゆどっと蛙声飛び入りぬ 幼の初夏(はつなつ)しばし吾を包む
最終歌:裏窓ゆどっと蛙声(あせい)飛び入りぬ 幼の初夏(はつなつ)吾(あ)を包む
題詠は「包む」でした。何で何を「包む」のか、いろいろと発想を飛ばせる題詠ですが、「蛙声」と音に注目した点がおもしろいと思いました。詠み手を包んでいるのは蛙声であり、幼き日の初夏の思い出でもあるでしょう(「幼」は詠み手自身と解釈しました)。
私にも同様の経験があります。最初の勤務校が僻地で、教員住宅は田んぼにぐるりと囲まれていました。田植えが終わると夜には蛙が道路にまではい出てきて一斉に鳴くのです。何百匹か、まさに「どっと」です。前半の蛙の声が裏窓から飛び込んでくる、という場面設定、表現も巧いと思います。結句の字余りもゆったりとした回想する時間の流れが感じられます。
合 評
(深沢)モリアワガエルの声でしょうか。自然との関わりが多い歌に和まされます。
(白樺)外から蛙声が聞こえてきてお孫さんと初夏を過ごされる幸福感が伝わるお歌です。
(北里)匂いや音でふっと時が巻き戻されることがありますね。ここではカエルの声に幼き日々を思い起こしているのですね。「しばし」の時の流れが良いですね。格助詞「ゆ」が新鮮。万葉っぽい。