2020年3月31日火曜日

令和2年3月の短歌と合評

担当  深沢



今月は宇津木千代さんの歌を選らばせてもらいました。
昨年から立て続けに訃報ばかりで、相当気が滅入り落ち込んでしまい、人生について遅いかもしれませんが考え始めたところでした。いつ自分の順番が来てもおかしくないこの頃だと思い始めました。

芸人の島田洋七さんの祖母で島田さんの自伝小説に登場し大きな話題となった人物の言葉を引用した歌です。徳永サノさんは超のつく貧乏な家だったので苦労人でしたが、明るく奇想天外なアイデアを持ち、破天荒な発言をする人でした。その方の名言の1つから詠まれたこの短歌は、本当に自分の今の人生を考えさせられる素材となりました。また、この結句がとても愉快でユーモア感にかられました。結句から本当に徳永さのさんの言葉に同意できることができました。新型コロナ肺炎のため在宅勤務となり、人生の暇つぶしの素材を毎日とっかえひっかえ考えることができ、物事を肯定的に考えることが出来始めたところです。


(原歌)折り紙を折りつつ思ふ「人生は死ぬまでの暇つぶし」真っ事に

(深沢)また身近な方が亡くなり、人生が後残り何日あるのか真剣に考え始めた中、もう少しで現状況在宅勤務になるので、本当に人生は暇つぶしだと感じて同意できます。暇つぶしになされていた事が折り紙を折ることだったのですね。結句が新鮮です
(北里)デイサービスの高齢者は皆さん同様の思いを抱いているのではないかと思うこと多々あります。塗り絵とか漢字とか、ボケ防止にと両親も施設のデイでやらわれています。後半の語調が整わないのは心の葛藤としてとらえました。デイサービスを発案した人自身が認知症になったTVのドキュメントで、自分が通所することになった時、「つまらん」と言っていたのが印象的でした。
(白樺)結句の「真っ事に」という言い回しがユニークです。折角授かった短い命を最後まで暇つぶしとは思いたくないですがこういう心理もあるのですね。
「佐賀のがばいばあちゃん」というドラマがありましたが、その中でがばいばあちゃんが、言った言葉で人生は死ぬまでの暇つぶしやから。暇つぶしには仕事が一番ええ。
という言葉がある。その引用です。この引用をしたときに、どこかに斎藤史の名句と言われている疲労つもりて引出ししヘルペスなりといふ 八十年生きれば そりやぁあなたの結句が頭にあったのかもしれない、という思いが歌が出来た後、気が付きました。


(最終歌)折り紙を折りつつ思ふ「人生は死ぬまでの暇つぶし」真っ事に

2020年3月14日土曜日

2020年2月の短歌と合評



担当:宇津木千代

今月の歌は白樺さんの歌を選びました。

元歌: 祖母(おおはは)の使ひし朱塗りのお重箱黒豆赤飯に息吹き返す
最終歌:祖母(おおはは)の使ひし朱塗りのお重箱黒豆赤飯に息吹き返す

 きっと作者の家は、古い伝統を守ってきた家で、代々大切に冠婚葬祭や、祝日に使ってきた食器類が未だに残っているのでしょう。この歌は、その食器類を出して使ったお正月の歌です。結句「息吹き返す」という言葉によって今は亡きおばあ様や家族の人々との思い出が活き活きと蘇ってきたことが想像できます。そして、木製の朱塗りのどっしりとした重箱に黒豆や赤飯が色鮮やかに映えている情景がありありと目に浮かびます。