2019年3月10日日曜日

2019年2月の短歌と合評



担当:北里かおる                                                                                                              
 平成最期の宮中歌会始のお題が「光」でしたので、それにあやかり2月の題詠は「光る」としてみました。太陽の光を歌ったものが多く、下記に取り上げる宇津木さの歌もそうですが、戦争体験と結びつけたことで印象的な一首となりました。

 原歌:殊更に記憶の中に光るもの防空壕に見上げし朝光

私に戦争体験はありませんが、自分が体験したことのように、映像として目に浮かぶ一首です。一晩中、不安な気持ちで隠れていた暗い防空壕、朝、そこから見た光の眩しさ…、生きていることの実感。闇の世界から出て見た「朝光」は、強烈な光として眼に飛び込んで来たのと同時に、脳裡にしっかりと焼き付いたのでしょう。「朝光」はやわらかい光の意と下記にありますが、私には、この歌の中では生命感に溢れ駆動する光として映ります。
他の方の歌にも「朝光」が使われており、私が「ちょうこう」と読むのか、と尋ねたことに対して宇津木さんがコメントしているので、それを引用します。
-確か先月だったと思いますが、吉井さんが白樺さんの歌で“朝光”を何と読むのか尋ねていましたね。その時、私が紫の字で、“朝光”は短歌独特の読み方で“あさかげ”と読みます、と回答しています。“朝影”とも書きますが、朝の柔らかな光の意味です。また“夕影”、“夕光”で“ゆうかげ”と読み、夕方の柔らかい光のことです。-

<合評>
(流水)「殊更に」を「とりわけ」と解釈すれば、まざまざと蘇るようです。
(北里)戦争の経験を詠った歌ですね。初句の漢字表記の「殊更に」が効いていると思います。
(深沢)防空壕から見える光はきっと限られたものだったのでしょうね。

最終歌:殊更に記憶の中に光るもの防空壕に見上げし朝光

0 件のコメント:

コメントを投稿