2018年7月29日日曜日

2018年7月の短歌と合評



担当:宇津木千代

 今月の短歌は深沢しのさんの歌を選びました。今月この歌を選んだ理由は、歌作の過程で、どうしてもいろいろな言葉を入れたくなりますが、削ってもいい言葉をできるだけ削っていって、すっきりとさせる過程を学んでもらいたいと思い、選びました。
自分で作歌している時には、なかなか削れませんが、指摘されればよく見えてきますし、その指摘を受け止めて、再度推敲すれば、よりよい歌ができあがります。


元歌:  堀浅き仏足石の面にたまり梅雨のはしりの雨水ひかる 
最終歌:  彫り浅き仏足石にし溜まりたる梅雨のはしり薄き陽に光る



(北里)「仏足石」は日本では奈良の薬師寺にあるのが最古のものだそうですが、ここではどこで見た仏足石のことを詠ったのでしょうか。梅雨前の雨水とのつながりがよく分かりませんでした。何か関りがあるのでしょうか。

(千代)“堀浅き”は、“彫り浅き”ではないですか。“面”はなくてもいい言葉のような気がします。仏足石にし(“し”は強調とか、調子を整えるときに使う)「彫り浅き仏足石にし溜まりたる梅雨のはしり薄き陽に光る」(雨水はいらないのでは?)としてみましたが、如何でしょうか?。(昨年の11月に奈良を訪ねた時、昔、梅雨に訪れたのを思い出しました。雨水との特別な関わり合いはありません


2018年7月10日火曜日

2018年6月の短歌と合評



担当:北里かおる                                                                                                             
6月の題詠は「揺れる」でした。今回は宇津木さんの短歌を選びました。
この歌の良さは、下記の合評にある通りです。「決断」の意味するところが深く重い歌だと思います。犬の世話をしているうちにその犬を飼いたいという思いが強くなった。が、いろいろ思案して飼いたいという思いに終止符を打ち…。その後のことは詠われてはいませんが、単なる別れだけではなく、殺処分などつらく悲しく「決断」があったのではないかと想像させられます。ついえる命に思いが及ぶと、詠み手の心の揺れ幅はひじょうに大きいものだったことに気づかされます。さらっと詠っていますが、題詠の「揺れる」という言葉をよく生かしている歌だと思いました。

  原歌:迷い犬四日養い決断す揺れる心にピリオドを打ち

<合評>          
(北里)「捨て犬」なら保健所に連絡し殺処分にされることを念頭にした「決断」だったことが暗に伝わる歌になり、ペットの育児放棄が問題になっているので社会詠として良いと思います。「迷い犬」だと捨てられたのではないかもしれませんね。読み手の受け止め方は、飼い主を探そうとするかな、などとなるかもしれません。
(すえまつ)ストーリーが明確で良いと思います。この犬にとってはバッドエンドでしたが、そういうケースの方が多いので共感持てます。
(深沢) 結句から一体この犬は動物保護に引き取られたのか、そのまま迷い犬からそのうちに引き取られたのかどちらになったか考えることが出来興味津々です。
(白樺)動物との決別の心情を「揺れる心にピリオド」としたところがよいと思います。

最終歌: *迷い犬四日養い決断す揺れる心にピリオドを打ち