令和三年 一月一日
十二月短歌と合評 担当:宇津木千代
今月の歌は北里かおるさんの歌を選びました。
元歌: 逝き母の洗濯ものをたたみつつ着る人なきを犬につぶやく
最終歌:逝きし母の洗濯ものをたたみつつ着る人なきを犬につぶやく
母親の亡くなった哀しみを詠う時、そのひとなりの哀切の情がほとんどの歌から伝わってきます。何歳になっても親を亡くす哀しみは例えようもなく、切々としたものがあります。この歌もそうですが、でもただ哀しみを詠うのではなく、残された母親の洗濯物を洗濯し、いつもならきちんと畳んで「はい、お母さん洗濯物よ」と届けるところでしょうが、亡くなってしまった母親の洗濯をして、きちんと畳んでも届けて着てもらう人も居なくなってしまった。その侘しさを傍にいる犬に吐露する、という状況が眼前に浮かび上がってくるということ、とてもいいと思います。
(千代) 初句は“亡き母の”ですか?それとも“逝きし母の”ですか?心情が、とくに“洗濯もの”という具体から、せつなさが伝わってきますね。犬だけが唯一の語れる相手であることも侘しさを醸していますね。
(深沢)お母様のい亡くなられた悲しみが伝わってきます。私の独り言の聞き手も愛犬なのでつぶやきが理解できます。
(白樺)日常的に繰り返されている具体的な小さな動作の中で人生に一度の死という大きな課題に向かい合っていることが切実です。