担当 北里かおる
元 歌: 茶を注ぐあわひにさえもICUのわが子思ひて母われは冷ゆ
最終歌: 茶を注ぐあわひにさえもICUのわが子思ひて母われは冷ゆ
6月の歌は、宇津木さんの歌を選びました。
結句からは、悲しみを通り過ぎ、思考も氷ついたように止まってしまっている印象を受けます。息子さんが突然の病に倒れ、一時ICUに入っていたことを知っているので、なお更に胸に迫る一首でした。家族や友人の誰もが心を痛めて過ごしていたのは間違いありませんが、その中でも母親が子を思う気持ちはまた格別であるとことを再認識させられた歌でした。
7月6日のTV]番組の「サワコの朝」で、宮本信子さんが伊丹十三監督と死別した時のことを、前に進むために『悲しい気持ちは冷蔵庫にしまって凍らせた』と語っていて、この歌のことを思い出しました。
<合評>
(北里)何をしていても病床にあるお子さんのことが頭を離れない母親のつらい思いが結句に良くあらわされていると思います。
(深沢)子が病気の時は親はたまらない気持ちになります。何気ない時間でもついつい考えてしまう様子が結句から感じとれます。
(白樺)熱いお茶と冷える心が対照的で上の句の具体が効果的です。