2019年2月10日日曜日

2019年1月短歌と合評



担当:白樺ようこ

今月の歌は吉井流水さんの「平成の・・・」を取り上げます。


原歌: 平成の最後の年の夜の明けて身だしととのへ初詣せり

二0一九年は平成の元号が変わる年でもあり、古くからの日本の風習をタイムリーに切りとられています。講評を参考にして推敲した歌では、助詞「の」を「は」に変えることにより、その年の夜に特別な意味を持たせて強調することができました。名詞「身だし」は、「身だしなみ」の短縮形ではなく、誤用法です。「身なり」にすることで音も優しくなりました。このように五七五七七の短歌では助詞ひとつで歌の感じや意味あいに大きな変化をもたらせます。名詞を選ぶ時も分かり易さや間違った使い方をしていないか等を考えて辞書をこまめに引くことが大切です。
文法、言葉の選び方、並び方等のメカニカルな面も大切ですが、作者の存在感、独自性のある歌、心から湧き出る歌が歌人の目指すところだと思います。
  

(千代)“の”が続きすぎることもあり、“夜の”を“夜は”にしたら如何でしょうか。“の”は格助詞でもちろん主語になりますが、“夜は”とすると、平成の最後の年の夜は、と強調することになり、特別な夜という印象を読者に与えます。“身だし”は、“身だしなみ”の短縮形として使われたのですか?少し無理があるのではないですか?あるいは、今若者がスマホなどで短縮形の言葉でやり取りしたりしていますが、“身だしなみ”を“身だし”と使うのですか?“身だし”という語は辞書にはありませんね。「・・・・・・初詣せり身だしなみ正し」身だしなみ整え では9字になってしまいますので、“正し”として8字で、1字余りにしました。
参考までに“の”が6つも入った佐々木信綱の歌で教科書にもよく載っている“ゆく秋の 大和の国の 薬師寺の 塔の上なる ひとひらの雲”があります。
(白樺)すがすがしいお正月の切り取りがタイムリーでよいですが作者の存在がもう少し感じられると個性的になるようです。
(北里)色々なことが平成最期で、初詣も然りですね。「身だしととのへ」で詠み手の真摯な姿勢が読み取れます。
(深沢)平成も5月からは元号が変わるので身だしととのへという部分で初詣への心持ちが変わってくるのが理解できます。



最終歌: 平成の最後の年の夜は明けて身なりととのへ初詣せり