担当:北里
2月の題詠は「刻」または「刻む」でした。今回は深沢しのさんの歌を取り上げます。
私は俳句の添削、講評をする夏井いつきさんの話がとてもおもしろくて、プレバトというテレビ番組の「俳句の才能査定ランキング」コーナを、最近では録画までして見ています。短歌にも通じるポイントがたくさんあり、感心させられることが多く勉強になります。俳句は短歌より14音も少ないので、添削の段階でより言葉を厳選し無駄を省き、語順を入れ替えたりするのですが、夏井さんが添削した後は、見事に映像が浮かび上がってくるのです。これは下記の宇津木さんの講評に書かれていることでもあります。今回の深沢さんの最終歌は、まさにそういった考察を経て、映像が立ち上がったと思いました。
また、「皆」と一語入ったことで、皆とは家族なのか友達なのか、はたまた会社の同僚だったりするのかもしれない、などと想像がふくらみ、「時刻む」がより意味ある言葉になって読み手に届く歌になったと思います。月の名前は字余りにはなりましたが、音節で読むと7音になりますし、何より今年の1月31日の皆既月食であったことがはっきりしました。私もあの夜、寒さに凍えながらあの月を見ました。地球の反対側ではありますが月の同じ現象を見て、その不思議な美しさへの思いが共有できたようでうれしくなりました。結句の「て」は説明的なので省くのが良いと思います。
最後に、夏井さんの言葉を引用します。「私じゃなく、日本語がすごいんですよ。助詞を変えるだけで作者の立ち位置が全然違ってくる。無意識にしゃべっているときは気づかない日本語の豊かな働きが、17音という短い詩形のなかだとよくわかる。」短歌も同様、円居短歌会のこういった活動の中で、私も日本語のすばらしさを再確認することができたらと思います。
深沢しの
原歌:ブルームーン駐車場の屋上から眺めける色に魅せられ時を刻む
<合評>
(千代)“眺めける色”には違和感を覚えます。“けり”の助動詞にはいろいろな意味がありますが、(これは辞書に当たってみて下さい。)“眺めし色に”で十分だと思います。言いたいことは“ブルームーン”の色に魅せられたことですから、駐車場とか屋上とかは、なくてもいい言葉ですよね。短歌はやはり、簡略化ですから、どうしてもなくてはならない言葉はどの言葉か、を見極めることだと思います。次に残しておきたい言葉はどれか、と順番で言葉を削ったり、残したりをする必要があると思います。駐車場は、いらないですね。でも高い処から眺めた、という状況を出すには“屋上”は、残しておきたいですね。結句の意味が少し不明です。「ブルームーン屋根の上から眺めたる色に魅せられ刻を忘れる」刻か刻むの題詠ですから“刻”としました。時に同じ意味ですし、とき と読ませてもいいですが。
(北里)月は見る場所によって色が変わるわけではないので、「駐車場」は省略できると思います。「ブルームーン」は幾つか定義がありますが、同じ月に2回満月があり、その2回目の月をそう呼ぶことが多いようです。だから名前のように月の色が青いわけではないのですよね。でも青い月として想像する方が、月に魅せられた気持ちがわかります。本当に青い月があったら見てみたいです。1月31日は「スーパーブルーブラッドムーン」と呼ばれる皆既月食でした。札幌でも見られました。赤黒い赤銅色でした。寒くて長時間見るのは無理で、大半はTVで中継を見ていました。 (白樺)「駐車場」は削れるのでは。「眺めける」は「眺める」でよいと思います。
最終歌:屋上で皆と眺めて時刻むブルーブラッドムーンの色に魅せられて