2018年1月3日水曜日

12月の短歌と合評

担当:宇津木千代


 悲しみの詰まりし如し亡き母が闘病二十年使いし巾着

今月の短歌は深沢しのさんの短歌を選びました。お母さまを亡くされ、日常に使われていた様々なものが形見として残されたことでしょうが、この歌は”巾着”から亡きお母さまを思わずにはいられない歌を詠んでいます。 ”巾着”という言葉から、古めかしさと懐かしさが感じられ、それが悲しみが詰まっているような亡きお母さまのものである故に、読者の感情に直接働きかけてきます。きっと亡くなられたお母さまの枕元にでもあったのでしょうか?20年の闘病生活にはいつも手元に置いていた巾着だったのでしょうから、入院していても手放せない何か大切なものが入って居たのでしょうね。最終歌をもう少しすっきりとさせるとより良い歌になったように思います。例えば「悲しみのいっぱい詰まりいる巾着は二十年母の闘病支う」”巾着が支える”というと、普通の感覚ではおかしな表現ですが、短歌の中では異化した表現としてしばしば使われます。

 (千代) 巾着を、悲しみが詰まっている、と表現したところがいいですね。
(北里)「巾着」に着目したのはとても良いと思います。「悲しみが詰まっているような母の巾着」なのだと思うので、初句と結句では離れすぎています。
語順を工夫されてはと思います。うまくつながれば比喩の「如し」は省いた方がよりストレートで伝わるものが増すと思います。
(白樺)「頭巾」体言止めの結句が悲しみを伝えているようです。「詰まりし如し」を「詰まりし頭巾」とするのも一案です。

最終歌:悲しみの詰まりし如し亡き母が闘病二十年使いし巾着