今回のお題は「相聞歌」。「白樺ようこ」さんの歌を取り上げてみます。
原歌 「サトウさん」声かけてくれし背の高き君との会話いつしらに待つ
(中井)「いつしらに待つ」は“いつの間にか知らず知らずに”という意味でしょうが、短縮形としてもおかしい気がします。
「通勤の群れ歩みいていつしらに職なきわれはひとり遅れる 」「いつしらに夫は父の如くなり子の如くなり逝きてしまいぬ」という歌が検索で引っかかりましたが、正しい用法なのかどうか、ご存知の方教えてください。
(千代:たぶん、正しい用法ではないと思います。が、使われてしまっているようですね。使うのなら「いつしらで」というのが、正しい用法で、その根拠は調べればすぐわかりますが、「いつしらずて」(いつか知らないうちに)“ずて”は、“ないで”という否定形ですから、それが詰まって“で”になったものですから、“で”をぬかしては意味をなさないですね。「いつしらで」が正しい用法で、「いつしらに」は、間違いですね。)
(萩)どきどき感がもう少し伝わってくるといいと思います。
(北里)君の説明が長くて少しもたつきますね。声をかけてくれた後に会話があり、またのそんな会話の機会を待っているのですね。場の状況を会話に絞るなど整理されると分かりやすくなると思います。
(千代)「声かけくれし」と“て”をとれば、7音になりますね。3、4句目がすこし説明的な感じがしますし、読んでいてもたつきます。例えば“「サトウさん」声かけくれしバリトンの君待ちゐる 耳鋭(と)くなりて“
言葉は生き物ですから変化していくことは当然あるわけですが、誤用されたものがいつしか定着してしまったという事例がままあります。この言葉もすでに短歌で使われ始めているので、その内普通に使われるようになるのかも知れません。
しかし、誤用はあくまでも誤用 なのですから、注意して間違った使い方をしないように気を付ける必要があると思います。口語の歌が主流になってきていて、若い人がどんどん歌を詠むようになれば言葉がどんどん崩れていく気がして心配です。
推敲後の歌 「サトウさん」背後から声かけくれし君との会話いつしらで待つ