担当:萩
3月の短歌と合評は宮下ももさんの一首を選びました。オノマトペの魅力は印象を鮮明にする、リアルに表現できる、リズム感が心地よく感じられるなどがあげられると思います。その反面、類型化するという弱点があります。この歌の中の〝ひゅーゆー”は作者自身が風の音に耳をすませ聞こえるままの音を言葉にしたと書いています。実際に風の音を聞く(厳しい感じ)のと〝ひゅーゆー″と書かれた文字を見る(少しのんびりした感じ)のとでは感じ方に若干のギャップを感じるのではないかと思いました。
宮下 もも
(原歌)ひゅーゆーと春一番が吹き荒れて若木ゆらゆら青空に向く
(もも)「ひゅーゆーと春一番の吹き荒れて若木ゆらゆら青空に向く」と推敲しました。
(萩)〝ひゅーゆー“〝ゆらゆら“と2つオノマトペが入っていますが、春一番は強い風なのでマッチしないのではないかと思いました。
(千代)“ひゅーゆと”という擬音表現は、のんびりしている感じがしてどうも春一番の疾風の感じがしません。“ゆらゆら”も疾風に吹かれた若木の感じがしませんが、如何でしょうか。若木が青空に向く、という表現もよくキャッチできません。どういう状態なのですか?
(北里) 擬音語で始まるのは新鮮です。春一番は強風なので「吹き荒れる」とつながるのは理にかなっていて良いと思いますが、「ひゅーゆー」とか「ゆらゆら」だとやさしいイメージで、春一番の激しさには物足りないような気がします。
(中井) 吹き荒れているのですから「ゆらゆら」はちょっとそぐわない気がします。「若木ぐいいっと青空を向く」って感じでは?
(いずみ:ゆらゆら青空に向くいい表現ですね。ももさんの前向きな生き方。歌を詠みながら感じています。)
(きぬ) 春はもうそこまで来ているよ、と元気付けられるような一首ですね。一句目の音もとても良いと思います。
(白樺) オノマトペが面白い効果をだしていますね。初句は「ひゅーひゅー」では?
(もも) この木は、幹が細くて春一番が吹き荒れている時、幹がユーらユーらと左右に揺れていました。その隣の古くて太い木が去年の6月に屋根に倒れたので、この細い木が倒れなければいいけれど、、、心配しながら見ていました。風の音は、耳をすまして、よく聞いてから考えだしたものです。ヒューヒューだと、冬というイメージがあります。そこで、春の力強くて暖かさも入った、どひゅーという感じで詩的な音をと思い、聞こえるままの音を表現しました。
最終歌: ひゅーゆーと春一番の吹き荒れて若木左右に揺れ揺れ動く